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第三紀層の上に


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 解説

 1924年から25年にかけての欧米の旅から帰国した賀川は農村運動に目覚める。デンマーク農村の高等福音学校の存在が賀川を大きく動かした。そこらの事情は『雲水遍路』に詳しい。

 1926年、武庫川の自宅に日本農民福音学校を開設、1930年には御殿場に同高根学園、1934年、北海道空知にも農民福音学校を開設した。

 その間、全国をめぐって農村伝道に努め、立体農業と協同組合の精神を説く、一方で、農村を題材とした多くの小説を出版した。『一粒の麦』(講談社、1931)、『乳と蜜の流るゝ郷』(改造社、1935)、『荒野に叫ぶ声』(第一書房、1937)、そして翌年『第三紀層の上に』(講談社、1938)を上梓した。

 この時期は大恐慌後にあたり、経済的に行き詰まり、軍事的には満州事変から日中戦争の勃発した時期と重なる。東北地方は経済的に困窮した上、働き手である青年たちは徴兵で次々と戦場に送られ、子どもたちが身売りされるなど日本社会が大きく揺れた時期でもあった。

 賀川が農村改造小説を書かざるを得ない時代背景はそんなところにあった。

 第三紀層というのは、日本列島を美』面積の85%を占める山岳地帯の准平原の地層である。日本を貧困から救うには放置されてきたこの第三紀層を開拓しなければならないというのが、この小説の底流である。

 賀川の小説では珍しく美しいながらも社会性もしっかりした女性が登場する。そして主人公はその女性と結婚し幸せな人生を送る。そんなシナリオである。

 その女性は岩手県の貧しい農村の幼なじみ。出稼ぎにでた函館のカフェで出会い、見初めるが、付きまとわれた破落戸の子を孕んだ上、梅毒にかかり顔の皮膚が崩れていく。さらに生まれた子どもは盲目と、不幸は彼女を次々と襲うが、主人公は一心に彼女のために尽くす。

 彼女も主人公の恩に報いるため、ひたむきに学び稼ぐ。主人公はやがて美しさを取り戻した彼女と岩手県の貧しい農村に戻り、新しい村作りに励むる

 表紙装丁は初版本の内表紙を元に復元した。(2013年8月20日、伴武澄)
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